労災事故による骨盤部の骨折で後遺障害が残った場合に受けられる補償と会社への損害賠償について 【弁護士が解説】

建設現場や製造・物流などの職場において、転落・落下・車両接触・挟まれ・巻き込まれなどの事故により、骨盤部を骨折してしまうケースがあります。

骨盤は体幹を支え、上肢・下肢・内臓をつなぐ重要な構造であるため、骨折の程度によっては、長期間の治療・リハビリを要し、最終的に後遺障害を残すことも少なくありません。

ここでは、まず骨盤骨折の特徴を整理し、次に、「労災保険についてどのような補償を受けられるか」、「さらに会社(使用者)に対する損害賠償請求の可能性」という2つの視点から解説します。

骨盤部の骨折と後遺障害等級認定について

骨盤部の骨折と後遺障害について

骨盤は、左右の寛骨(腸骨・恥骨・坐骨)および仙骨・尾骨から構成されています。

体重を支え、歩行・姿勢制御・内臓保護・荷重分散など多くの機能を担っています。

骨盤部が骨折すると、これらの機能が損なわれ、可動域制限・変形・痛み・しびれ・下肢の動きの制限などが残ることがあります。

治療方法としては、軽度例では保存療法(安静・固定・リハビリ)、重篤例では手術(プレート・スクリュー固定など)を要するケースもあります。

いずれにせよ、骨盤骨折後に「症状固定(治療を継続してもこれ以上改善が見込めないと医師が判断する時点)」を迎えた後、残存症状がある場合には、後遺障害の認定を検討することになります。

骨盤部の骨折に関する障害と後遺障害等級について

機能障害

例としては、股関節の可動域が健側と比べて大幅に制限されるというものが挙げられます。

そして、以下の等級に該当する可能性があります。

8級7号「1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの」

10級10号「1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」

12級7号「1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」

に該当することが考えられます。

変形障害

例としては、骨盤が癒合後に変形してしまったケースが挙げられます。

そして、以下の等級に該当することが考えられます。

12級5号「骨盤骨に著しい変形を残すもの」

なお、ここにいう「著しい変形」とは、裸になったとき外見上も明らかに変形が分かるものをいうもので、エックス線写真等ではじめて確認できる程度のものは、該当しません。

神経症状

例としては、骨折部位付近の神経圧迫・損傷により、痛み・しびれ・違和感が残るものが挙げられます。

そして、以下の等級に該当することが考えられます。

12級12号「局部にがん固な神経症状を残すもの」

14級9号「局部に神経症状を残すもの」

このように、骨盤骨の事故の後遺障害認定のパターンは多様であり「どのような障害が・どの程度残っているか」が等級認定・補償額を左右します。

労災保険(労災給付)による補償内容

骨盤部を骨折した労災事故では、まずは労災保険の適用を受け、定められた給付を請求することが前提となります。

以下、主な給付内容を整理します。

療養補償給付

治療費用及びリハビリ費用など、治療に要する経済的負担を補填するものです。長期治療・リハビリを要する骨盤骨折では特に重要な給付となります。

休業補償給付

骨盤骨折により手術・入院・外来リハビリ等で働けなかった期間に対し、給付基礎日額(直近3ヶ月の賃金総額の日割りした金額)の8割(休業補償給付60%+休業特別支給金20%)が給付されるものです。

障害補償給付

後遺障害が残った場合には等級に応じて、年金方式または一時金方式で支給されます。通常、重い等級(第7級以上)では年金、それ以外(第8級以下)では一時金という方式がとられます。

これらの給付を請求するためには、まず労災として「業務災害」または「通勤災害」として認定を受ける必要があります。

事故発生直後から、治療・リハビリ記録、症状固定後の医師所見、画像所見(レントゲン・CTなど)を適切に整えておくことが、後の後遺障害認定・等級請求のために非常に重要となります。

使用者(会社)への損害賠償請求の可能性

労災保険による給付を受けたとしても、それが被災者の受けた損害の全てを補填するわけではありません。

すなわち、労災保険では、休業給付や将来の逸失利益を完全に補填するわけではありませんし、慰謝料については給付の対象とされていないのです。

しかし、会社の安全配慮義務(労働契約法第5条、労働安全衛生法第3条1項)違反が認められる場合には、会社に対して、労災保険では補填されなかった上記の各損害についても損害賠償請求を検討する余地があります。

そして、安全配慮義務とは、使用者は、労働者が生命、身体等の安全を確保しつつ労働できるように、必要な配慮をしなければならないことをいいます。

安全配慮義務違反が問題となる場面としては、以下のような場面が典型です。

・安全帯・墜落防止措置が未設置、あるいは適切に運用されていなかった高所作業現場

・足場の老朽化・不安定・滑りやすい路面や明かり不足等の作業環境不備

・重量物の落下・挟まれを防ぐための荷次・作業手順・誘導員が配置されていなかった

・研修・教育・作業指示・機械の安全装置が適切に整備・運用されていなかった

会社に対する請求では、会社の安全配慮義務の存否や過失の割合等が争点になることが多いため、早期に労災事故発生状況・現場環境・整備状況・作業指示状況・被災者の作業実態などを整理しておくことが非常に大切です。

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補償と損害賠償を受けるためのポイント

骨盤骨折で後遺障害を残した場合、以下のような点に注意して手続きを進めると、適正な補償・賠償を受けやすくなります。

・治療開始から症状固定までの過程を記録(画像・手術記録・入院・通院記録・リハビリ経過)する。

・後遺障害診断書を取得する際には、医師に「骨盤骨折による機能障害・変形・神経症状」に関する具体的な記載を求める。

・可動域の比較、変形の外見的証明、神経症状の画像所見等、等級認定に必要な要件を満たすよう、医師の所見を整える。

・休業期間・収入減少・将来の労働能力低下についても、証明資料(給与明細・源泉徴収票・作業日誌等)を整える。

・会社側の安全配慮義務違反の存否・過失の割合等について早期に検討を開始する。

・労災保険給付と会社に対する損害賠償請求との関係を理解しておく。

一人で抱え込まず、弁護士にご相談を

骨盤を骨折して後遺障害が残った場合、被災者の生活・就労・家族関係・将来設計には大きな影響を及ぼします。

労災保険による給付だけで安心せず、会社に対する損害賠償の可能性も視野に入れ、適正な補償・賠償を受けるためには早期の対応が鍵となります

弊所では初回無料相談も承っております。事故直後からの記録整理・後遺障害認定・会社責任の検討まで、ワンストップでサポートいたします。

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