労災隠し…労災申請をさせてもらえない【弁護士が解説】

「労災は使わせない」と言われたら要注意

「ケガをしても健康保険で処理してほしい」「うちは労災に入っていない」「パートやアルバイトには関係ない」。 もし勤務先からこのような説明を受けたなら、それは単なる説明不足ではなく、違法な「労災隠し」に該当する可能性があります。 労災保険(労働者災害補償保険)は、会社の規模や業種、さらには正社員・パート・アルバイトといった雇用形態を問わず、日本国内で働くすべての労働者に適用される公的な保険制度です。たとえ入社初日であっても、週に1日しか働いていなくても、業務中や通勤中にケガをすれば、労災保険を利用する権利があります。 会社の主観的な判断や独自の運用によって、労働者の正当な権利行使を妨げることは決して許されません。

本記事では、弁護士が、労災隠しの法的意味、2025年から始まった電子申請義務化の影響、そして被害に遭ったときの具体的な解決策を詳しく解説します。

労災隠しとは何か~犯罪と権利侵害の二つの側面~

「労災隠し」という言葉は一般的な用語ですが、法律上は極めて深刻な二つの側面を持っています。

(1)刑事罰の対象となる「犯罪」

労働安全衛生法第100条および労働安全衛生規則第97条により、会社は、労働者が業務中に死亡、または休業を要するケガや病気を負った場合、遅滞なく労働基準監督署へ「労働者死傷病報告」を提出しなければならないと定められています。

この報告を怠ったり、「業務中の事故を私生活上のケガと偽る」「発生場所を虚偽報告する」といった隠蔽行為を行った場合、労働安全衛生法第120条に基づき、50万円以下の罰金が科されます。単なる社内ルール違反ではなく、刑事罰の対象となる行為です。悪質なケースでは、書類送検や企業名の公表が行われることもあります。

(2)労働者に対する深刻な「権利侵害」

労災保険給付を請求する権利は、会社の承認によって与えられるものではなく、法律により労働者個人に認められた固有の権利です。 「申請書に会社のハンコがないと受理されない」「会社を通さなければ申請できない」といった説明は、いずれも誤りです。会社が署名や捺印を拒否すること自体が、労働者の正当な権利行使を不当に妨害する行為にあたります。

2025年からの「電子申請義務化」で変わる現場

2025年1月1日から、労働者死傷病報告は原則として電子申請により提出することが義務化されました。この制度改正は、労災隠しの抑止に大きな効果をもたらすと考えられています。

・記録の透明化 申請履歴がデジタルデータとして管理されるため、「提出した・していない」といった不透明な言い逃れが困難になります。

・不自然な処理の把握 蓄積されたデータをもとに、未報告の疑いがある事案や不自然な処理が把握されやすくなります。

・記載漏れの防止 必須入力項目が設定されており、重要事項の記載漏れや曖昧な報告が行いにくくなっています。この電子化の流れにより、これまで「会社が出さなければ分からない」とされがちだった労災事故は、制度上、より把握されやすい環境へと変化しています。

「健康保険で処理して」に応じてはいけない理由

会社から「治療費は会社が出すから、病院では健康保険を使ってほしい」と言われることがあります。しかし、この対応には大きなリスクがあります。 まず、業務上のケガについて健康保険を使用することは、健康保険制度の趣旨上認められていません。 そのため、後日、健康保険組合から「本来は労災で処理すべきだった」と判断されると、過去に支払われた保険給付の返還を求められることがあります。結果として、一時的に高額な治療費を自己負担せざるを得ない事態に陥るおそれがあります。さらに、労災申請による労災認定を得ていなければ、将来的に後遺症が残った場合でも、障害補償給付(後遺障害の補償)を受けることができません。これは生活に長期的な影響を及ぼす重大な不利益です。

労災隠しに遭ったときの具体的対応策

(1)客観的な証拠を確保する

事故状況を示す写真、ケガの部位の写真、事故を報告した際のメールやLINE、通話記録、同僚の証言メモなどをできる限り保存してください。また、医療機関では初診時に「仕事中にケガをした」ことを必ず明確に伝えることが重要です。

(2)会社の証明がなくても直接申請する

労災の申請書には事業主の証明欄がありますが、会社が協力しない場合でも空欄のまま提出できます。 会社が証明を拒否している事情を記載した上申書を添えて、管轄の労働基準監督署へ直接提出する方法を「本人申請」といいます。

(3)時効に注意する 労災に関する主な時効は以下のとおりです。

・療養補償給付・休業補償給付:2年

・障害補償給付・遺族補償給付、会社に対する損害賠償請求(令和2年4月1日以後に発生したもの):5年

時間が経過すると本来行使可能であった権利が失われる可能性があります。早めの対応が重要です。

弁護士に相談するメリット

労災隠しが疑われる事案では、弁護士が次のような形でサポートします。

・証拠を整理したうえで、労働基準監督署に対し説得的な主張を行う

・労災保険では補償されない慰謝料等について、安全配慮義務違反として会社への損害賠償請求を検討する

・労災申請を理由とした嫌がらせや不当解雇などの二次被害に対応する

特に、会社が事故そのものを否定しているケースでは、初動対応が結果を大きく左右します。

まとめ

労災申請を妨害したり、労災事故による治療について健康保険の使用を求めたりする行為は、明確な違法行為にあたります。「会社が協力してくれないから仕方がない」と諦める必要はありません。 労災制度は、安心して治療に専念し、生活を立て直すために設けられた制度です。会社との関係を一人で抱え込まず、早い段階で専門家である弁護士にご相談ください。当事務所が、あなたの生活と将来を守るために全力でサポートいたします。

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