労災における精神疾患は弁護士に相談すべきかどうかについて解説

精神疾患による労災で悩まれている方の中には、日々の体調不良に加えて、今後の補償手続きや会社との関係、弁護士にいつ相談すべきかなど、様々な不安を抱えておられることと思います。
「今すぐ動いた方がいいのだろうか?」「弁護士に相談するのは早すぎる?遅すぎる?」と迷われる方も多くいらっしゃいます。

弁護士としてまずお伝えしたいのは、「今は焦らなくても大丈夫です」 ということです。ここでは、精神疾患による労災と弁護士への相談のタイミングについて、わかりやすくお話しします。

1.精神疾患の労災は「まず治療に専念」が原則

精神疾患の特徴は、外傷のように目に見えるケガとは違い、症状が周囲からは分かりづらい点にあります。
例えば、うつ病や適応障害の初期は「ただ疲れているだけ」「最近ストレスが多いから」と軽く考えてしまうことも少なくありません。しかしそのまま無理を重ねると、症状が徐々に悪化し、仕事や日常生活に深刻な支障をきたしてしまうケースも多いのが現実です。
精神疾患は「頑張れば乗り越えられる」ものではありません。自分を責めず、まずは医療機関でしっかり診断を受け、治療に専念することが最も大切です。
労災の申請や損害賠償請求については、治療がある程度進んでからでも対応は可能です。今はまず、ご自身の心身の安定を優先してください。

2.労災請求では「症状固定」が重要な区切り

精神疾患による労災手続きの中では、「症状固定」 というタイミングが非常に重要になります。
症状固定とは、簡単に言えば「これ以上治療を続けても大きな改善が見込めない状態」です。医師の診断によって判断されるもので、完治とは必ずしも同じ意味ではありません。
症状固定のタイミングを迎えることで、はじめて現在残っている後遺障害が明確になり、その内容をもとに損害賠償の請求や後遺障害等級の認定手続きが進められます。
逆に、症状固定前の段階で無理に請求を進めてしまうと、治療の途中経過によって補正や変更が必要となるリスクもあります。だからこそ、症状固定を迎えた段階で弁護士に相談するのが、最も適切で安心できるタイミングなのです。 

3.精神疾患における症状固定の判断は慎重に

精神疾患の症状固定は、身体のケガと異なり明確な検査結果で判断しにくいため、医師による慎重な診断が必要です。
以下のような要素を総合的に見ながら症状固定の判断が行われます。
・症状の持続性:治療を続けても症状が長期間にわたり改善しない状態が続いているか。
・日常生活・仕事への支障:仕事への復帰が難しい、家事や人間関係に困難を感じるなど、生活全般に支障が続いているか。
・治療の限界:薬物療法・カウンセリング・精神療法などを行っても、これ以上の改善が難しい段階に達しているか。
本人の「まだ良くなっていない」「もう少し様子を見たい」というお気持ちは自然なものです。だからこそ、医師とよく相談し、客観的な診断をもとに慎重に進めていくことが大切です。

4.精神疾患の治療が長引くのはごく自然なこと

精神疾患は、治療期間が長引くケースが多いことも特徴です。これは決して本人の努力不足や甘えではありません。
精神疾患の治療は、症状の原因や生活背景、性格傾向、職場環境など、複数の要素が複雑に絡み合っているため、時間をかけて一つ一つ整えていく必要がある治療です。
治療方法には次のようなものがあります。
・薬物療法:抗うつ薬・抗不安薬・睡眠薬などで症状をコントロールします。
・認知行動療法(CBT):考え方のクセやストレスへの反応を見直し、心のバランスを整えていきます。
・カウンセリング:心理的な負担や悩みを整理し、気持ちを安定させるサポートを行います。
こうした治療は回復まで何年もかかることも珍しくありません。焦らず、着実に治療を続けることが最も大切です。

5.労災認定の要件は後から弁護士が整理

精神疾患が労災と認められるためには、以下のような要件を満たす必要があります。
・労災認定の対象となる精神疾患を発症していること
・発症前6か月以内に、業務による強い心理的負荷が存在していたこと
・業務以外の要因(家庭の事情や既往歴)が主たる原因でないこと
これらは、症状固定を迎えた後に弁護士が医師の診断書や会社の資料などを整理しながら証拠をそろえていきます。今の段階では、要件の細かい部分まで悩まなくても大丈夫です。

6.症状固定後に弁護士へ相談するメリット

症状固定を迎えた段階で弁護士にご相談いただくことで、安心して補償手続きや損害賠償請求を進めることができます。
弁護士は以下のようなサポートを行います。
・適切な損害賠償額の算定
・後遺障害等級認定の申請書類の作成・提出
・労災保険給付手続きの支援
・会社や保険会社との交渉・代理対応
精神疾患の労災請求は、専門的な法律知識や医療知識が必要となる場面が多くあります。「すべて自分でやろうとしない」ことが、ご自身の心身の安定のためにも大切です。

7.今は「自分を守る時間」

精神疾患による労災問題は、誰にとっても先が見えづらく、不安になりがちな問題です。しかし、正しい順序で一歩ずつ進めていけば、必ず適切な補償や賠償を受けることが可能です。
・まずは治療に専念する
・症状固定を迎えたら弁護士に相談する
・その後の法的手続きは弁護士が全面サポート
今は、ご自身の体と心を守る時間と捉え、どうか焦らずゆっくりと回復を目指してください。そして、症状固定を迎えたら、私たち弁護士に安心してご相談いただければ幸いです。

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