【弁護士が解説】建設業で墜落事故に遭った方へ――後遺障害等級と賠償金を適切に得るために知っておくべきこと

建設現場で働く皆さまにとって、「危険」は決して特別なものではありません。毎日のように足場に上り、重い資材を運び、時には天候とも闘いながら作業を続けておられる。そんな現場では、安全に気を配ることが当たり前になっている方も多いことでしょう。

しかし、どれだけ注意を払っていても、防ぎきれない事故が突然起きてしまうことがあります。中でも高所からの「墜落事故」「転落事故」は、建設現場で最も多く、しかも非常に重いケガや後遺障害、場合によっては命に関わる深刻な事態に繋がってしまいます。

今回は、もしこのような事故に巻き込まれてしまったとき、どのようにして適切な補償を受け取り、将来の生活を守るための賠償を得るのか、弁護士の立場からわかりやすくご説明します。事故に遭われた方やご家族の方が少しでも安心できるよう、順を追って解説してまいります。

1. 建設現場の墜落事故

建設現場では高所での作業が当たり前の日常になっています。足場の組み立て作業、屋根や鉄骨の上での作業、はしごを使った作業、クレーンによる高所作業。

こうした場面では、わずかなミスが命取りになることもあります。

厚生労働省のデータでも、建設業の死亡災害のうち最も多いのが「墜落・転落事故」です。

・足場の板が外れて転落

・はしごが倒れて墜落

・高所作業中に安全帯が外れて転落

・屋根上でバランスを崩して落下

こうした事故が一瞬にして発生し、骨折・脊髄損傷・頭部外傷・内臓損傷などの重大なケガに繋がることも少なくありません。

2. 事故直後は「治療」と「記録」が最優先

万が一、事故が発生してしまったとき、一番大切なのはまずご自身の身体を最優先に考え、速やかに適切な治療を受けることです。

高所からの転落では、外傷の有無にかかわらず、脊髄損傷・内臓損傷・頭部打撲など見えない箇所に深刻なダメージを負っている可能性もあります。事故直後にしっかりと検査を受け、診断書など医療記録を残しておくことは、後々の補償手続きにおいて非常に重要な証拠となります。

3. 事故直後の「証拠保全」の重要性

治療と並行して、事故状況を客観的に記録することが後々大きな力になります。

・現場の写真

・事故の瞬間を目撃した作業員や監督者の証言

・作業日誌や作業指示書のコピー

・会社が作成した事故報告書

これらの証拠が残っていることで、後に「会社の安全管理に問題があったのでは?」という主張を裏付ける大きな材料になります。事故後の混乱の中では難しいこともありますが、ご家族が協力して証拠を確保しておくことも検討してみてください。

4. 会社の「安全配慮義務」とは

事故に遭った方やご家族にまず知っておいていただきたいのは、会社には法的に「安全配慮義務」という重要な義務が課せられているという点です。

安全配慮義務の内容として、会社は、従業員が安心して安全に働けるように、次のような措置を取る法的義務を負っています。

・高所作業での安全帯や命綱の使用義務

・安全ネットや手すりの設置

・定期的な安全教育や訓練

・天候不良時の作業中止判断

・足場や機材の事前点検と整備

会社がこれらの義務を怠っていた場合、会社の安全配慮義務違反として、労災とは別に損害賠償請求を行うことが可能になります。

5. 労災保険と損害賠償請求

事故に遭った場合、まず労災保険から給付を受けることができます。労災保険は国の制度であり、会社の過失の有無に関わらず給付を受けられる点が特徴です。

労災保険から受けられる主な給付

・療養補償給付(治療費全額支給)

・休業補償給付(給与の約8割相当)

・障害補償給付(後遺障害が残った場合の一時金や年金)

・遺族補償給付(死亡事故の場合の遺族年金)

ただし、労災保険だけでは損害の全額をカバーしきれない場合が多いのが実情です。

労災保険で不足する部分として、主に以下の損害が会社に対する損害賠償請求によって補うことが可能になります。

・治療費の自己負担分・差額分

・実際の収入減少(休業損害の不足分)

・後遺障害慰謝料(後遺障害が残ったことに対する精神的苦痛への賠償)

・将来の逸失利益(障害により働けなくなった将来の収入)

・交通費・付添費などの細かな実費

特に後遺障害が残るケースでは、労災保険だけでは生活再建に不十分なことが少なくありません。また、事故の内容や後遺障害の程度によっては、数百万円から数千万円の賠償額となることもあります。

6. 後遺障害の認定は慎重に

墜落事故においては、脊髄損傷による麻痺、脳損傷による高次脳機能障などの重度の後遺障害が残るケースも少なくないため、労災の後遺障害等級でも高い等級に認定される可能性があります。

後遺障害等級は、1級〜14級まで細かく定められており、等級によって賠償額が大きく変わってきます。

この後遺障害等級の認定が適正にされるかどうかが、賠償金額を左右します。逆に言えば、不適切に低い等級が付けられてしまうと、将来の補償額が大きく減ってしまいます。

7. 弁護士に相談することが安心につながる

事故に遭われた直後は、治療やリハビリに追われ、冷静に手続きを進めることが難しくなります。こうした時こそ、労災事故に詳しい弁護士のサポートを受けることが、安心・納得の補償を得る大きな力になります。

弁護士は以下のようなサポートを行います。

・会社との交渉や代理

・労災保険の後遺障害等級認定手続のサポート

・必要な医療記録・診断書の準備

・賠償金の適正額の試算と請求

会社との交渉において「会社から提示された金額が妥当なのかわからない」という不安に対しても、弁護士が一緒に整理し、必要ならば専門的に交渉しますので、どうか一人で抱え込まず、早めに専門家へご相談ください。

8. 最後に――事故に遭われた皆さまへ

墜落事故は決して一方的に労働者の自己責任とされるものではありません。仕事中の事故であれば、それを未然に防ぐべきだった会社側にも責任が生じる可能性があります。そして、適切な補償や賠償を受け取ることは、あなたとご家族がこれからの生活を立て直していくための当然の権利です。

もし今、事故後の対応に不安を感じておられるなら、どうか一度ご相談ください。あなたとご家族が安心して前を向けるよう、弁護士として全力でサポートさせていただきます。

初回相談料0円 労働災害の無料相談 初回相談料0円 労働災害の無料相談

03-3808-0573

受付時間 平日 9:30~17:30